2022年は円安ドル高が急激に進んできました。
円安進行を受けて、契約しているドル建ての生命保険の解約を検討している方は注意が必要です。
今回はドル建て保険を解約する前に注意したいポイントと、保険料負担を軽減する方法を解説します。
円高・円安とは
まず円高・円安について米ドルを例に簡単に説明します。
円高=ドル安、円安=ドル高と考えてみてください。
1ドル100円から1ドル80円になった場合、1ドルを手に入れるために必要な費用が20円安くなっているので、為替はドル安、つまり円高に動きました。
逆に1ドル100円から1ドル120円になった場合、1ドルを手に入れるために必要な費用は20円高くなるため、ドル高、つまり円安に推移したわけです。
ドル建て保険の特徴
先ほど説明した為替の動きを踏まえた上で、ドル建て保険の特徴・しくみについて解説していきます。
ここではドル建て保険のなかでも貯蓄型の保険を前提にお伝えします。
貯蓄型の保険とは、次の2種類です。
ドル建て保険は為替の影響を受ける保険
円建ての保険にはない特徴として、ドル建て保険では保険料や保険金が為替の影響を受ける点が挙げられます。
ドル建て保険では保険料の支払いをドルでおこない、保険金・解約返戻金もドルで受け取るためです。
また、為替手数料がかかる点もドル建てならではです。
為替の変動はリスクである一方で、円安になればその分利益を得られます。
ドルを使って日本より金利の高い国に投資運用するため、円建て保険にくらべて投資性の高い保険といえるでしょう。
保険料の支払金額は変動する
ドル建て保険では保険料の支払いをドルでおこなうとお伝えしました。
正確には、保険会社に対しては円で保険料を支払いますが、保険会社が保険料をドルに替えて運用しています。
為替相場が円高(ドル安)に動けば支払う保険料は安くなり、円安(ドル高)に動けば支払う保険料は高くなるしくみです。
同額の保険金で円建ての保険とドル建ての保険をくらべた場合、保険料(ドル建ては円換算の保険料)は普通、ドル建て保険のほうが安い傾向にあります。
日本よりも高金利な投資先に投資・運用して収益が見込める分、保険料が割安に設定されているわけです。
解約返戻金も為替に影響を受ける
ドル建て保険の保険金は文字通りドルで積み立てられます。
保険金や解約返戻金を日本円に換金して受け取る際、契約時よりも円高(ドル安)であれば受け取れる金額が少なく、円安(ドル高)に進んでいれば受け取れる金額は多くなります。
「元本保証じゃないの?」と思うかもしれませんが、元本はあくまでドルでの保証です。
ドル建て保険を解約する際の注意点
ドル建て保険を解約する場合、とくに10年未満での解約や低解約返戻金型の保険の解約には注意が必要です。
解約する前によく考えたいポイントをお伝えします。
解約返戻金の元本割れ
円建ての保険にもいえますが、貯蓄性の高い保険は長期保有が基本だと認識しておきましょう。
円建て保険でも途中解約すれば元本割れのリスクがあります。
円建てにくらべて高金利で運用できる点がドル建て保険の魅力ですが、保有期間が短ければその恩恵をじゅうぶんに受けられません。
とくに低解約返戻金型の保険については、契約年数の浅いうちは返戻率が低い代わりに、保険料の払い込みが終わってから返戻率が高くなるよう設定されています。
契約している保険の種類をよく確認しましょう。
また後ほど詳しく説明しますが、ドル建て保険では円建て保険にない手数料・諸費用もかかります。
解約に必要な費用も忘れずチェックしましょう。
過去の為替の動き
円安による保険料の負担増から解約を検討している方は、過去30年間の為替相場の推移を知っていただくと少し安心していただけるのではないでしょうか。
過去30年間の為替の動きを見ると、1ドルおおむね100円~120円で推移しています。
2022年11月現在の140円はバブル期の水準です。
100円を割ったのはリーマンショック時と東日本大震災のあとでした。
有事の際には大きく上下しますが、長く続くわけではなく、だいたい100円~120円程度に収束していきます。
今は保険料を割高だと感じるかもしれませんが、満期あるいは保険料の払い込み終了まで待てば、その分保険金がドルベースで増えます。
あわてて解約せず、長い目で見ることが肝心です。
手数料・諸費用
ドル建て保険を解約し、日本円で解約返戻金を受け取るケースでは為替手数料や運用手数料といった各種手数料がかかります。
運用手数料は7~9%と、決して低くはない料率です。
また早期解約した場合には解約控除がかかる点にも注意が必要です。
解約返戻金そのものの額だけではなく、手数料や諸費用も踏まえて、本当に解約するべきかどうか考えてみてください。
通常は経過年数が短いほど高く、徐々に少なくなり、保険料を10年以上払い込むと適用されなくなります。
保険は長期保有が基本だとお伝えした理由は、収益の享受が不十分になるだけでなく、解約控除が発生する可能性もあるためです。
保険料の支払いが厳しいときの対処法
解約は慎重におこなう大切さがお分かりいただけたと思います。
それでも「この円安はいつまで続くんだろう。これ以上保険料が上がったら、やっぱり解約するしかないのかな…」と不安な方もいらっしゃるでしょう。
最後に、保険料の負担増への対処方法を4つお伝えします。
契約者貸付制度の利用
契約者貸付制度を利用すると、解約返戻金を担保としてお金を借りられます。ただし、制度を利用して借りた資金には利息がつきます。
返済する際には返済時のレートが適用されるため、円高に進んでいれば返済額が抑えられます。逆に円安に進んでいた場合は利息も含めると割高になってしまう点には注意が必要です。
自動振替貸付制度の利用
自動振替貸付制度では、保険料の払い込みがないまま一定の期間が過ぎた際、保険会社が自動的に保険料を立て替えてくれます。気になる方は契約内容を確認してみましょう。
解約返戻金を担保にする点、立て替えてもらった保険料には利息がつく点は契約者貸付制度と同様です。
払済保険への移行
払済保険の移行では、保険契約は解約せず、保険料の支払いを中止します。支払ってきた保険料はそのまま据え置かれ、据え置かれているあいだも保険会社による資産運用が続きます。
またすぐに円へと換金してしまうのではなく、円安になるタイミングまでドルで資産を保有しておけるため、元本割れのリスクを軽減できるしくみです。
特約を解除する、保険金を減額する
もし保険契約に特約をつけているなら、特約を解除すれば保険料を減らせます。同様に、保険金の減額によっても保険料を抑えられます。
どちらも保障内容を削る選択ですので、目先の保険料減額だけにとらわれず、万が一の際に必要な保障を受け取れるか、きちんと計算しましょう。保険を契約した目的は、資産運用だけではなかったはずです。
ライフステージが変わり、保障がそこまで必要なくなっていれば問題ない選択肢ともいえます。
おわりに
急激な円安によって解約が増えているドル建て保険ですが、安易な解約はおすすめできません。
解約返戻金はどうなっているのか、必要な手数料・諸費用はいくらなのか、保険会社へ問い合わせてよく考えましょう。
保険料の負担を減らしたい方のために、対処法についてもお伝えしました。
ドル建て保険を契約している方にとって、為替の大きな動きは不安材料ですが、あわてず落ち着いて、長い目で見た決断が大切です。
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