このページでは生命保険へ加入している方であれば比較的手軽に貸付を受けられる「契約者貸付制度」という制度について解説していきます。
制度の仕組みやメリット、注意点について分かりやすく解説していきますので、近い将来にまとまったお金が必要になりそうだという方は是非チェックしてみてください。
※ 利用の仕方によっては保険の効力を失う可能性が出てきてしまいますので、ご利用の際は内容をよく理解してからにしましょう。
契約者貸付制度とは?仕組みを解説
貯蓄型の生命保険(終身保険や養老保険、学資保険など)に加入している場合、保険を解約すると解約返戻金を受け取ることができますが、その解約返戻金の一定の範囲内で貸付を受けられるという制度が契約者貸付制度です。
解約返戻金を担保にするため、掛け捨てタイプの定期保険などの場合は利用することは出来ません。また、貸付金には会社所定の利息がかかるため、基本的には貸付を受けた金額+利息分を返す必要があるという点は覚えておきましょう。
以下、この制度の抱きやすい疑問点についてまとめておきます。
誰が借りられるのか
その保険の契約者本人のみ。基本的には配偶者や子供であっても利用はできない。
審査はあるのか
自分自身の積み立てたお金が担保になるため、審査は無い。
どうやって申し込むのか
- インターネットのマイページ
- コールセンターへの問い合わせ
- 担当者へ連絡する
- 近くの来店窓口
などで申し込むことができる。保険会社ごとに異なるため、確認が必要。
いつから借りられるのか
保険加入後すぐにでも利用可能。
いくら借りられるのか
限度額は解約返戻金の8割前後。
利息はどのくらいか
大体2%~6%程度。保険会社や保険の種類、保険金額によって変動するため、確認が必要。
いつまでに返せば良いのか
基本的に返済期限はなく、いつ返しても良いという形になっている。
貸付金を返さない場合
元利金が借入上限額を上回ってしまった場合、保険契約が失効する可能性がある。
契約者貸付制度の注目すべきメリット4つ
契約者貸付制度には注目すべきメリットがいくつかありますので、直近でお金が必要になりそうな方はチェックしておいてください。
審査が不要で、すぐに借りられる
契約者貸付制度は自分が加入している保険の解約返戻金を元にしてお金を借りることになるため、審査が不要となっています。
一般的な借り入れの場合は年収やカードローンの借入状況によって金額が抑えられたり、または借りられなかったりしますが、契約者貸付制度を利用する場合は例え無職だとしても問題なく借りることが出来るのです。
また、生命保険に加入してすぐに利用することができ、最短で即日の融資をしてくれる保険会社もありますので、とても利用しやすい環境になっていると言えます。
保険を解約しなくても借りられる
生命保険に加入している状態で大きなお金が必要となった場合、その保険を解約して返戻金を受け取るという方法もあります。
この方法でも確かにまとまったお金を受け取ることができますが、保険を解約する場合は以下の点に注意しなければいけません。
- 解約後の保障は、当然ながら受けることができません。万が一の事態に備えるための保障がなくなってしまうため、新たに保険契約するなどの対処が必要となります。
- 新たに生命保険に加入する場合、以前の保険加入時よりも年齢が高くなっているため、保険料も以前の保険の時より高くなってしまいます。また、大きな病気やケガなどをしている場合、その程度によっては加入が難しくなってしまうケースもあります。
- 保険料の払込期間中に解約する場合、通常の解約返戻金の7割程度しか受け取ることができません。つまり、自分が支払った保険料の7割程度しか受け取ることができないので、元本割れしてしまうのです。終身保険は払込期間が過ぎれば解約返戻金が一気に高くなるのですが、途中で解約するとそのメリットがなくなってしまいます。
契約者貸付制度を利用すれば解約せずにまとまったお金を受け取ることができるので、上記の注意点を気にする必要がなくなります。その点はメリット部分と言えます。
返済期限がなく、比較的自由に返済できる
契約者貸付制度には明確な返済期限がありません。いつ返しても大丈夫なのです。自分や家庭の経済状況に合わせた返済ができるため、かなり自由に返済計画を立てられるのが特徴です。
ただし、自由がある半面、注意点もあります。それについてはデメリット部分で解説します。
低金利で借りられる
他の借り入れを利用する場合、例えば銀行カードローンの相場が大体1.5%~15%程度(※ 利用額が低いと10%を超える)、消費者金融の相場は3%~18%程度です。
契約者貸付制度を利用する場合は2%~6%程度なので、他の借り入れと比べると低金利で利用できるといえます。
契約者貸付制度で知っておくべき注意点3つ
契約者貸付制度には魅力ポイントがあるものの、知っておくべき注意点もいくつかあります。ご利用の前に以下の点は必ずおさえておきましょう。
利子が複利で増えていってしまう
契約者貸付制度は気軽にいつでも借りられて、返済期限がないという点が魅力ではありますが、それに甘んじて返済するのを引き延ばしていると、元利金(元金と利子の合計)が時間とともにどんどんと増えていってしまいます。
というのも、契約者貸付制度で借りたお金は低金利ではありますが、その利子は複利で増えていきますので、長い時間をかけることで元利金が思っているよりも大きくなってしまうのです。
複利が分からない方に向けて、単利と複利について簡単に説明しておきます。
単利 | 元本のみに利子が発生する。 |
複利 | 一定期間に発生した利子も元本に加えて利子を計算する。 |
例えば元本100万円で1年分の利子が5%の場合、単利では1年目は5万円の利子が発生します。そして元本部分に変更がない場合は、2年目も5万円の利子がかかります。
ですが複利の場合、1年目こそ単利と同じく5万円の利子の発生で済みますが、2年目は1年目の利子を含めた105万円に5%の利子がかかるようになり、105万円×0.05=5.25万円の利子が発生する計算になるのです。
そこまで金額が増えるわけではないような気がしますが、複利は長い時間をかけるとかなり高額な利子がかかるようになってしまいますので、この点は特に注意しておきましょう。
借入上限額を超えると保険契約が失効する可能性がある
基本的に貸付元金と利子の合計(元利金)が借入上限額(解約返戻金額)を上回ってしまった場合、保険契約が失効する可能性が出てきてしまいます。
つまり、契約している保障がなくなってしまうかもしれないということです。将来のリスクに備えるために保険に加入したはずですので、その保障がなくなるのは本意ではないはずです。保険契約が失効・または解除にならないよう、計画的に返済計画を立ててから無理のない利用をしていきたいところです。
ちなみに、上記で解説しているように契約者貸付制度は複利となっていますので、長い期間返済がないと思った以上に元利金が大きくなり、保険契約の失効に近づいてしまいます。利用する場合は元利金の把握を怠らないようにしたいところです。
借入金が残っている場合、保険金が返済に充てられてしまう
もしも借り入れをしている状態で死亡保険金、または満期金や解約返戻金を受け取ることになった場合、まだ返済していない金額+利子の分が受け取る金額から差し引かれてしまいます。
受け取り予定の金額よりも減ってしまうため、もし子供の学費などに充てる予定を立てていた場合は、その分も考慮してお金を用意しておく必要があります。
まとめ
このページでは契約者貸付制度について解説してきました。気軽に素早く利用できるため、急な出費にすぐに対応できるというメリットがある反面、利子が複利であるなどの注意点もあります。
利用する際は計画的な返済計画を立ててからにして、利用後は保険契約が失効・解除にならないように元利金の把握は定期的に行っていきたいところです。
監修者プロフィール
原 裕樹
CFP認定者/1級ファイナンシャル・プランニング技能士