病気やケガを幅広い範囲で備えられる医療保険、がんという病気だけに備えるためのがん保険。
保険に加入する際、この2つの違いが良く分からずに困惑してしまう方も少なくないかと思います。
この2つは似ていながらも保障内容や利用目的は大きく異なっているのが現状ですので、保険選びの際はそれぞれの違いについて学んでおくと必要な保障を選びやすくなるかと思います。
ここでは医療保険とがん保険の違いと、それぞれの選び方について解説しています。
これから医療保険やがん保険を検討するという方、またはすでに加入している保険を見直したいという方は、是非とも参考にしてみてください。
がんとそれ以外の病気について(何故がん保険があるのか)
まずは参考までに、厚生労働省が発表している令和2年(2020年)の日本人の主な死因トップ10の割合を見ていきたいと思います。
第1位 | 悪性新生物 | 27.6% |
第2位 | 心疾患(高血圧症を除く) | 15.0% |
第3位 | 老衰 | 9.6% |
第4位 | 脳血管疾患 | 7.5% |
第5位 | 肺炎 | 5.7% |
第6位 | 誤嚥性肺炎 | 3.1% |
第7位 | 不慮の事故 | 2.8% |
第8位 | 腎不全 | 2.0% |
第9位 | アルツハイマー病 | 1.5% |
第10位 | 血管性及び詳細不明の認知症 | 1.5% |
※参考:令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 – 厚生労働省
日本人の約3割、3~4人に1人の割合でがんによって死亡しているという結果になっています。
ちなみに、日本人の約2人に1人が生涯でがんにかかると言われていますので、私たちにとって悪性新生物(がん)はかなり驚異的で、備えるべき病気であると言えるのです。
「何故、幅広い病気を保障してくれる医療保険というものがありながら、がん専用の保険まであるの?」と疑問に思う方もいるでしょうが、大半の人が罹るがんという病気に対して出来るだけ備えておきたいと思うのは自然なことであり、がん保険は安い保険料で充実の保障内容になっているものが多いので、がん保険は私たちのニーズに応えている保険商品を言えるのです。
医療保険とがん保険の特徴
次に、それぞれの特徴を見ていきましょう。
医療保険の特徴
がんを含む病気・ケガ全般を保障してくれるのが医療保険です。
保険会社によって中身は異なりますが、主に入院給付金、手術給付金を主契約としており、病気やケガで入院、手術をした際に給付金を貰う形になっています。
通院や先進医療の保障などは特約で用意されており、必要に応じて付加することができます。
また、医療保険でもがん診断特約や三大疾病特約を付加することが出来るため、保険料が許せるなら医療保険+がん保障という形にすることも可能です。
がん保険の特徴
医療保険とは対照的に、がんの保障のみに特化しているのががん保険です。
保険会社によって保障内容は異なりますが、大きく分けて以下の4つのタイプに分かれます。
2. 抗がん剤治療や放射線治療などを受けたときに給付金が貰える「治療給付金タイプ」
3. がんの治療で入院・手術したときに給付金がもらえる「入院給付金タイプ」
4. がん治療で実際にかかった治療費(自由診療・先進医療を含む)を補償する「実額補償タイプ」
このうちのどれかを主契約としたがん保険が多いです。
また、他の保障を特約として付加し、がん治療に対して備えを厚くすることも出来ます。
基本的にがん以外の病気については保障されませんが、その分がんに罹った時の保障はとても充実しています。
また、範囲ががんのみと狭いため、充実の保障内容にも関わらず、保険料は安く抑えられています。
医療保険とがん保険の違う点
それでは、医療保険とがん保険は具体的にどのような違いがあるのか、見ていきたいと思います。
全体的な保障の範囲、給付金額
これまでも解説してきましたが、医療保険とがん保険では保障の範囲が異なります。
医療保険は病気・ケガ全般が保障範囲ですが、がん保険はがんのみを保障範囲としています。
ちなみに、医療保険は病気やケガに対して全体的にフォローしてくれるのは心強いですが、医療技術の進歩などの理由で入院日数が短くなっているのが現状なので、主契約(入院給付金)だけでは給付金額は大きく貰えない可能性があります。
そしてがん保険は範囲こそがんのみと狭いものの、がんと診断されたら50万円~100万円などの大きな一時金が貰えるなど、保障が充実しているのが特徴です。
それぞれ一長一短があるという感じです。
入院の支払限度日数
医療保険は基本の主契約部分が「入院給付金」になっている商品が多いですが、支払限度日数が決まっています。
1入院あたりの支払限度日数は60日または120日、通算の限度日数は1,000日などで設定されています。
1入院あたりの支払限度日数は保険料を高くすることで増やすことが出来ます。
対してがん保険は1入院あたりでも通算でも無制限となっています。
つまり、がん治療で何日入院しようが、無制限に保障されるということです。
この点はがん保険の方がメリットが高いと言えます。
ただし、当然ですが入院給付金を保障内容に入れていないと対象にはなりません。
例えばがん診断給付金のみのがん保険に加入した場合、いくら入院しようが決められた診断給付金しか受け取ることはできません。
先進医療の保障範囲
治療費が全額自己負担となってしまう先進医療。
この高額な治療費に備えるために医療保険やがん保険では「先進医療特約」が用意されていますが、実はこの特約の保障範囲はそれぞれで違っています。
医療保険に付加する特約の場合は先進医療全般が対象になりますが、がん保険に付加する特約の場合はがんの治療を目的とした先進医療のみが対象となるのです。
先進医療を利用する可能性は高いとは言えない(むしろ低い)ですが、より幅広く先進医療に備えたいという希望がある場合は医療保険の先進医療特約の方が要望に沿う形となります。
がん保険の場合だと範囲が狭くなってしまうため、この点は注意が必要となります。
免責期間
基本的にがん保険には一定の免責期間が設けられていることが多いです。
免責期間とは、保険に加入した後にがんになったとしても保障の対象外になってしまう期間のことを言います。
大体のがん保険では90日または3ヶ月と設定されていることが多いです。
何故免責期間があるのかというと、がんに罹っていることに気付かずに加入するというケースがあり、契約後すぐにがんと診断されて給付金や一時金を受け取るのは不公平となるため、このような仕組みが設けられています。
医療保険にはこのパターンの免責期間はありませんので、加入後すぐに入院・通院した場合でも給付金を受け取ることが出来ます。
ただし、医療保険でもがんに関わる特約には基本的に一定期間の免責期間が付いていますので、その点は覚えておきたいところです。
2つの保険、どう選ぶ?
医療保険とがん保険、どのようなタイプの人が向いているのかを見ていきましょう。
医療保険が必要な場合
病気やケガを幅広く保障してくれる方が安心できるという場合は医療保険がベストです。
もらえる給付金は普通の額ですが、がんを含む様々な病気の保障を得られるのは大きいです。
先進医療も多くの病気に対応しているのは嬉しいところです。
特に以下の方は医療保険が向いているかと思います。
妊娠予定の女性(※妊娠してからだと保障範囲が限られる)
生活習慣が乱れがちで、保険で安心感を得たいと思っている
がん保険が必要な場合
身近にがんに罹った人がいるなど、がんに対する不安が強い場合はがん保険への加入もお勧めです。
がん保険はがんのみ対応という範囲の狭さですが、その分かなり手厚い保障内容となっており、長期になりがちで治療費もかさみやすいがん治療に大きく備えられます。
保険料も良心的な設定なので、安く抑えたい方にも向いています。
他の病気やケガの分は貯蓄で備えておくなどするとさらに安心ですね。
特に以下の方はがん保険が向いているかと思います。
半分の人が罹るがんに対し、何らかの対策がないと不安に感じる
がん治療に対して金銭面での不安は解消しておき、治療に専念できるようにしたい
2つ加入するのが面倒、管理しにくいのは嫌だという場合は医療保険+がん特約という形も検討すると良いでしょう。
まとめ
医療保険とがん保険では保障内容や利用目的が異なり、対応できるリスクが違ってきます。
それぞれの特徴をよく理解し、自分または家族に必要な保険を選ぶのが良いでしょう。
また、どちらか一方に加入するのも良いですが、両方に加入することで病気全般に対応でき、さらにがんの保障は手厚いという状況を作り出せますので、家計に余裕があるなら「医療保険+がん保険」または「医療保険+がん特約」を検討するのも良いでしょう。