医療保険やがん保険への加入を検討する際、迷うことのひとつに「先進医療特約を付けるかどうか」があります。
先進医療特約は保険料がとても安いため、あまり調べずに付加することを選ぶ方も多いと思いますが、やはり保障の中身をちゃんと知ってから付けた方が安心感が増しますし、万が一病気になった時にも焦らずに先進医療を活用しやすくなるのではないかと思います。
このページでは、先進医療とはどんな医療なのか、先進医療特約の中身と必要性などについて解説していますので、医療保険やがん保険への加入を検討されている方は是非チェックしてみてください。
先進医療ってどんなもの?
先進医療とは「新しく研究・開発された治療や手術で、実績の面で厚生労働省に認められたもの」を言います。
難病に対して最新の医療技術を受けられるのが大きな魅力ではありますが、まだ現時点では公的医療保険の対象にするかを評価する段階にあるため、先進医療の技術料は全額自己負担になってしまいます。
また、先進医療の数はそれほど多くはありませんが、治療できる医療機関が限られるため、受ける場合はまず自分の病気に対する先進医療を実施している医療機関を探す必要があります。
探す場合はこちらのページをご覧ください。
先進医療を実施している医療機関の一覧|厚生労働省
先進医療は全額自己負担になってしまう点に注意!
先ほども触れましたが、先進医療は現時点では公的医療保険の対象とはなっていないため、全額自己負担になってしまいます。
先進医療の技術料は数万円で済むものもありますが、高いものだと数十万円~数百万円がかかってしまいます。
その費用が全額自己負担となってしまうため、先進医療を受ける際はその点に注意が必要となります。
ちなみに、病気になって治療を受ける際に通常の治療として認められる診察料、検査料、投薬料、入院料などは公的医療保険が適用されるため、通常通り1~3割の自己負担で済みます。
高額の場合はもちろん高額療養費制度も適用されます。
そして全体の治療の中の先進医療の部分は全額自己負担になります。
詳しくは下のイメージ図をご覧ください。
先進医療の部分は高額療養費制度の適用はありませんので、その点も注意してください。
先進医療の技術料はとても高額になる場合がある
では、実際に先進医療の技術料はどのくらいかかるのでしょうか。
これについてはピンキリで、数万円程度で済む場合もあれば数百万円もかかってしまう場合もあります。
技術料の例は以下の表をご覧ください。
技術名 | 平均技術料 | 年間実施件数 | 平均入院期間 | 実施医療機関数 |
陽子線治療 | 2,659,010円 | 824件 | 15.6日 | 17 |
重粒子線治療 | 3,135,656円 | 462件 | 4.2日 | 7 |
抗悪性腫瘍剤治療における 薬剤耐性遺伝子検査 |
37,514円 | 202件 | 50.6日 | 10 |
ウイルスに起因する難治性の 眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) |
28,140円 | 844件 | 2.7日 | 34 |
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 及び十二指腸空腸バイパス術 |
723,344円 | 17件 | 11.6日 | 4 |
子宮内膜刺激術 | 35,723円 | 19,701件 | 0日 | 152 |
参考:令和5年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について|厚生労働省
最も高いのは陽子線治療と重粒子線治療であり、1件当たり300万円の技術料がかかってしまいます。
両方ともがんの治療方法で、年間の実施件数も少なくありません。
かなり高額ではありますが、死亡率が高いがんという病気の治療のために選択するケースが一定数あることが分かります。
ただ、高額になりがちな先進医療とは言っても、全てが高い訳ではありません。
10万円以下の技術料で済むケースも多くありますので、実際に利用を検討する際はしっかりと調べておく必要があるでしょう。
先進医療特約ってどんなもの?
ここからは先進医療特約について解説していきます。
先進医療特約とは「先進医療による療養を受けたときに、かかった技術料と同額を受け取れる」というものです。
例えば陽子線治療で300万円の技術料がかかった場合、その全額を給付金として受け取ることが出来ます。
基本的に医療保険やがん保険の特約として付加するというもので、単独で加入することはできません(※ 一部の損保には先進医療に特化した商品もある)。
限度額は商品によって異なりますが、例えば通算2,000万円限度の場合、2,000万円までは給付金が出ますが、超えた分については自己負担となってしまいます。
ちなみに、通算2,000万円限度まで保障してくれると聞くと保険料もかなり高いように思うかも知れませんが、なんと月々数百円程度、年齢によっては200円以下の保険料で付加することが出来ます。
他の特約と比べてもかなりリーズナブルに付加できるため、金銭面の負担が少ない特約となっています。
3つの注意点を知っておこう
このように大きなメリットを持っている先進医療特約ですが、注意点もあります。
一つ目は、先進医療は技術料が高いものほど実施件数は少なくなるということです。
例えば上の表で解説した通り重粒子線治療は300万円以上の技術料がかかりますが、年間で462件しか実施されていません。
国立がん研究センターの最新がん統計によると、2019年に新たに診断されたがんは999,075例(男性566,460例、女性432,607例)であり、年間で約100万人ががんと診断されるということになっていますが、重粒子線治療の実施件数は年間で462件ですので、0.0462%の人しか受けていないことになります。
これはがんと診断された1万人の中でも4~5人しか受ける人がいないということで、いかに実施件数が少ないかが分かります。
保険料は確かに安いですが、それを活かせる可能性はかなり低いのが現状です。
二つ目の注意点は、がん保険から付加する場合は保障対象の範囲が限られる場合もあるということです。
例えば医療保険の先進医療特約は先進医療全体が保障対象となりますが、がん保険で付加すると「がん先進医療特約」となり、がんが原因の場合のみ保障対象になってしまいます。
最後の注意点として、重複契約には気を付けましょう。
先進医療特約は重複加入できない決まりになっている保険会社が多いですが、余計な面倒を増やさないためにも自分でも契約の際には気を付けるようにしましょう。
医療保険とがん保険の両方に加入する予定で、どちらに付加するか迷う場合は、より保障範囲が広い医療保険の方からの付加を検討すると良いかと思います。
先進医療特約の必要性について
これまでの解説から先進医療特約についてまとめると
保険料が安く、高額な先進医療の技術料に対して2,000万円まで備えられるというのは大きなメリットです。
そもそも「滅多に起こらないが、起こってしまった場合は高額な自己負担がかかってしまう」というものにこそ保険として備えた方が効率が良いため、その観点で見るなら付加しておくメリットの方が大きいと思います。
確かに技術料がとても高い陽子線治療や重粒子線治療はほとんどの人が利用しない治療法ではありますが、いざ自分ががんになってその治療法に頼らざるを得ないという状況になった時のことを考えると、やはり入っておいた方が安心感が強いのは間違いありません。
また、今後はさらに先進医療の種類が増える可能性も十分にありますし、がん治療以外でも先進医療は数多くあります。
将来の自分の体のためを考えるなら、万が一に備えられる先進医療特約の必要性は高いのではないかと思います。
ちなみに先進医療特約の保険料は年齢にもよっては200円以下で済むケースが多いです。
例えば20年間加入し続けた場合でも保険料はトータルで48,000円以下(200円×12ヶ月×20年=48,000円)しか掛かりませんので、この金額で先進医療の数十万、数百万円に備えられるのは費用対効果がかなり高いのではないかと思います。